ナチスに傾倒したIKEAの創立者は、一方でユダヤ人の親友がいた

昨晩読み終えた本。
1ヶ月前に発表された、2011年アウグスト賞受賞作品ということで、気になっていました。

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文化栄える戦前のウィーンの街で、ジャーナリストの一人息子として、家族に可愛がられて育ったオットー・ウルマン。

ボクシングやサッカー観戦、専用桟敷席でのオペラ鑑賞、
趣味はサッカー。
習い事はギリシャ語とバレエ。

都会の華やかな暮らしを満喫していたオットーの一家に、突然不幸が訪れます。

ナチスのオーストリア統合。

その日を境に、ユダヤ人の父親は仕事をクビになり、オットーも学校へ通うことも公園で遊ぶことも禁止され、ユダヤ人は3年以内にドイツ圏からの退去を言い渡されます。

各国大使館には、移住を希望するユダヤ人の長い列ができますが、どこの国もユダヤ人の受入れには積極的ではありません。

オットーの両親は、子供だけなら疎開させてくれるスウェーデンへ一人息子を送るという、苦渋の決断をします。

1939年2月1日ウィーン東駅。
14歳のオットーを含めた、100人もの幼い子供たちが両親と握っていた手を離し、列車に乗り込みます。

これが両親との最後の別れだとも知らずに―。

スウェーデンについた子供たちは孤児院に預けられ、そこから養父母にもらわれていきます。

戦時中でなくても貧しい農村地帯だった南スウェーデン。

子供を引き取りたいというよりは、安上がりな住み込みの女中として10歳前後の女の子たちは次々ともらわれていきます。

食べ盛りの男の子は敬遠され、最後まで引き取り手のなかったオットーは、農場を転々として働くことになります。

それでも、食べるものがあって、美しい夏には湖で泳いだり乗馬を楽しめるスウェーデンで暮らせることは、すごく恵まれたことでした。

というのも、ウィーンでは、人々が飢え死に、強制労働へ借り出され、収容所へ送られ、親戚知人もひとり、またひとり、と姿を消してきます。最後まで残っていたオットーの両親も、ついに・・・。

この小説は、オットーの父親が息子を手放した日から、毎日息子に書き送った手紙500通を元に、当時の様子が再現されていきます。

知性溢れる父親の手紙の、溢れんばかりの息子への愛が、寂しさが、読むものの心を打ちます。


そしてこの物語のハイライトは、オットーが17歳の時に働いた農園の息子と親友になるという点。

その親友の名は、イングヴァル・カンプラード。
後のIKEAの創立者にして、世界有数の富豪です。

実はカンプラードがナチスに傾倒し、スウェーデンのナチス党を支持支援していたというのはスウェーデンでは周知の事実。

そんな彼が、なぜ、ユダヤ人の少年と熱い友情で結ばれることになったのか・・・。

著者はカンプラード本人に2010年にインタビューを行い、鋭く迫ります。



事実は小説より奇なり。―そんな表現がぴったりのドキュメンタリーです。


日本発売:未定
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yokokuyama

Author:yokokuyama
1975年生まれ。
神戸女学院中高部、同大学文学部卒。
AFSでスウェーデンの高校に留学。

北欧専門現地手配旅行会社、スウェーデン大使館商務部勤務を経て、2010年初めに家族でスウェーデンへ移住。

現在は、日本の出版社さんにスウェーデンの本を紹介し、翻訳するお仕事をしています。

日本の雑誌への寄稿や撮影手配もしています。

趣味は、オーケストラ演奏、ヨガ

執筆した記事、翻訳した本etc
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